収用・交換等による土地建物の譲渡に関する特例。

 

公共の利益となる事業の円滑運用に必要な土地等の収用に関しては特別措置法33条、33条の4により課税の繰り延べ()5000万円特別控除()の選択適用が収容等の特例として認められております。

 

(1)               課税の繰り延べ→代替資産の取得(措置法33条の4)

  補償金等で代替資産を購入する場合。

1.       補償金額< 代替資産の取得価額。

譲渡は無かったものとみなされる。

2.       補償金 > 代替資産の取得価額。

代替資産の取得価額  →課税の繰り延べ。

補償金―代替取得価額 →分離(短期・長期)課税。

 

(2)               特別所得控除 →5000万円を譲渡所得より控除する。(措置法33条の4)

 要件@からCのすべてを充たす必要があります。

@代替資産・交換資産の()の課税の特例を受けていないこと。

A最初に買取の申し出があった日から6ヶ月以内に譲渡したこと。

1.最初に買取を申し受けた日

2.補償金等の金額を具体的に提示した日。

3.地権者説明会等で譲渡者に金額を個別に提示した日。

B譲渡が2年以上にまたがる場合は最初の年に譲渡した資産に限り適用

C買取の申し出を受けたものの譲渡であること。

 

()最初に買取の申し出を受けた日とは

1.      最初に買取を申し出た日。

2.      補償金の金額を具体的に提示した日。

3.      地権者に対しての説明会等で所有者と個別に合意した日。

4.      収用・換地処分のあった日。

5.      土地収用法に基づく明け渡し期限として定められた日。

6.      土地区画整理法の規定による換地処分日の翌日。

7.      都市再開発法第86条第2項による権利変換期日。

等が挙げられますが、事案に即して総合的に勘案されるべきですが、地権者が金額の提示を拒んだ場合、実質的にいかなる時点をもって「最初に買取を申し受けた日」となるかは個別の事案を吟味する必要があります。実質的な買取の申し出は所有者の合理的な合意があって有効な意思表示日と考えるべきですので、当事者が当該日を何時と認識しているかの問題です。買い取り証明の発行に際して担当者と慎重に確認し、いかなる法律により収容されたのかまた買取を拒んだ場合にいかなる法律により収用されたかを確定すべきです

 

 

()特例の適用が出来ない場合。

@当該資産の譲渡が最初に申し出があった日から6ヶ月を経過した日までにされなかった場合。

A譲渡が二年以上にまたがった場合最初の年に譲渡されなかった資産。

B譲渡が最初に申し出を受けた者以外の者からされた場合。

C確定申告書に特例適用の記載がなく公共事業者からの買取を証する書類の添付が無い場合。

D確定申告をしないことまたは添付書類の無いことについて、やむを得ない事情が無い場合。

 

()代替資産の購入(措置法33条・33条の3・4)

 譲渡(収用)の日から2年以内に代替資産を購入した場合は対価補償金のうち代替資産の取得原価相当額については、譲渡が無かったものとして課税を繰り延べる特例が適用されます。

また対価補償金による代替資産の購入に併用して対価補償金に代えて収用された資産と同種の資産を取得した場合は当該収用等された資産の譲渡は無かったものとして課税を繰り延べる特例が適用されます。対価補償金には土地そのものに対する補償金以外に土地の上の地上権喪失に対する補償金の特例適用の範囲となります。

また換地処分により換地した場合は従前の資産に着いて譲渡が無かったものとして課税を繰り延べる特例が適用されます。

 

()代替資産の種類

代替資産は原則として譲渡資産と同種の資産である事が要件ですがその内容の具体例を示すと。

@土地またはその上の権利。

A建物・建物付属設備(門・塀・庭園・煙突・貯水槽等)

B建物に付属する構築物。

C収用資産と種類・用途を同じくする資産。

D収用資産と効用を同じくする資産。

E収用資産が事業用である場合その者の事業の用に供する減価償却資産。

 

 

()譲渡所得の計算

所得税法 33条

譲渡所得

譲渡所得の金額は、総収入金額から当該所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする。

 

 

 

 

()税制改正の留意点

【改正点】平成16年分以降の所得から土地・建物の譲渡所得から生じた損失をそれ以外の他の所得 (不動産所得や給与所得など)との損益通算および次期繰越が認められないこととなりました。したがって土地・建物の譲渡所得から生じた損失は建物の譲渡所得から生じた譲渡益とは通算できますが、他の所得との通算および次期以降への繰越は出来ないことになります。

 

()住宅の譲渡損失の繰越控除

居住用財産を譲渡した場合は当該損失のうち「特定居住用財産の譲渡損失の金額」があるときは下記の要件をすべて充たす場合の特定居住用財産の譲渡損失について損益通算および翌期以後3年内の繰越控除が認められます。ただし合計所得が3000万円以下の年分に限ります。

適用要件

@     平成16年1月1日から平成18年12月31日の間に所有期間5年超の自己の居住用の土地・建物の譲渡であること。

A     譲渡契約締結日の前日において譲渡資産に係わる償還期間10年以上の一定の住宅の住宅借入金の残高を有すること。

 

(10)補償金の課税上の取り扱い(措置法33条の9)

 

 

補償金の実質的内容が「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱による各種の補償金の買え以上の区分一覧表」のいずれに該当するかにより実質的内容により判断します。

租税特別措置法通達 33−9

補償金の課税上の取扱い

対価補償金等の課税上の取扱いは、次のとおりとなるのであるから、留意する。

 

┌−−−┬−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−┐

|補償金|課税上の取扱い                         |

|の種類|                                |

├−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−┤

|@対価|譲渡所得の金額または山林所得の金額の計算上、収用等の場合の課税 |

|補償金|特例の適用がある。                       |

├−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−┤

|A収益|当該補償金交付の基因となった事業の態様に応じ、不動産所得の金額 |

|補償金|、事業所得の金額または雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入す |

|   |る。ただし、33−11により、収益補償金として交付を受ける補償 |

 

|   |金を対価補償金として取り扱うことができる場合がある。      |

├−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−┤

|B経費|(イ) 休廃業等により生ずる事業上の費用の補てんに充てるものと |

|補償金|して交付を受ける補償金は、当該補償金交付の基因となった事業の態 |

|   |様に応じ、不動産所得の金額は、事業所得の金額または雑所得の金額 |

|   |の計算上、総収入金額に算入する。                |

|   |(ロ) 収用等による譲渡の目的となった資産以外の資産(棚卸資産 |

|   |等を除く。)について実現した損失の補てんに充てるものとして交付 |

|   |を受ける保証金は、山林所得の金額または譲渡所得の金額の計算上、 |

|   |は譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。        |

|   | ただし、33−13により、経費補償金として交付を受ける補償金 |

|   |を対価補償金として取り扱うことができる場合がある。       |

├−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−┤

|C移転|補償金をその交付の目的に従って支出した場合には、当該支出した額 |

|補償金|については、所得税法第44条《移転等の支出に当てるための交付金 |

|   |の総収入金額不算入》の規定が適用される。            |

|   | ただし、33−14又は33−15により、曳家補償の名義で交付 |

|   |を受ける補償金又は移設困難な機械装置の補償金を対価補償金として |

|   |取り扱うことができる場合がある。また、33−30により、借家人 |

|   |補償金は、対価補償金とみなして取り扱う。            |

├−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−┤

|Dその|その実態に応じ、各種所得の計算上、総収入金額に算入する。ただし |

|他対価|、所得税法第9条第1項《非課税所得》の規定に該当するものは、非 |

|補償金|課税である。                          |

|の実質|                                |

|を有し|                                |

|ない補|                                |

|償金 |                                |

└−−−┴−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−┘

 

(注)移転補償金をその交付の目的に従って支出したかどうかの判定は、次による。

(1)当該移転補償金をその交付の基因となった資産の移転若しくは移築又は除却若しくは取壊しのための支出に充てた場合 交付の目的に従って支出した場合に該当することになる。

(2)当該移転補償金を資産の取得のための支出又は資産の改良その他の資本的支出に充てた場合 その交付の目的に従って支出した場合に該当しない。