<公的年金と401K

 

現在の日本では、既存の年金制度の財政難や少子高齢化等により、従来の年金を受給することは非常に困難な状況になりました。今後は、個人個人が少しでも多くの年金知識を学んで、自分の資産・生活設計をしていくことが大切ではないでしょうか。

まず、現在の日本の公的年金制度はどのような仕組みなのか以下に説明致します。

 

公的年金制度とは

@国民年金・A厚生年金・B共済年金の3種類を指し、国が運営しています。どの年金制度に加入するかは、職業によって異なります。

@ 国民年金(基礎年金):自営業者などが加入する制度

A 厚生年金:民間会社勤務の人などが加入する制度

B 共済年金:公務員などが加入する制度

上記の公的年金の上乗せとして、さらに将来の年金額を増やす

為に、「基金」や「税制適格退職年金」等があります。

これらの制度を図で表すと、3階建てになっていることがわかります。

   <図1

厚生年金基金

税制適格年金

3階

職域加算分

 

厚生年金

2階

共済年金

 

国民年金基金

国民年金(基礎年金)

1階

「国民年金」は1階部分で、年金制度の基礎になる為、「基礎年金」と呼ばれ、厚生年金や共済年金の加入者は、同時に1階部分の基礎年金にも加入していることになります。

 

 

年金は何歳から受給できるのか

年金は、国の制度だから、時期がくれば黙っていてももらえると思っているとしたら、それは大間違いです。自分で請求をしない限り、1円の年金ももらえません。ただし、請求が遅れてしまっても、5年前の分までは受給できます。

また、60歳で年金を請求すると、金額が減らされるからまだ請求しないと言う話をよく聞きますが、これも勘違いです。確かに65歳から受給する国民年金(老齢基礎年金)を60歳から繰上げて支給請求すれば、生涯年金額は減額されます。しかし、もともと60歳からもらえる厚生年金(老齢厚生年金)は、60歳で請求しておくことが重要です。上記に述べましたが、時効は5年間ですから、請求し忘れたままでいると、5年前の分はもらえないことになってしまいます。

 前述の厚生年金(老齢厚生年金)は、「特別支給の老齢厚生年金」と呼ばれ、今までは60歳から受給できたのですが、平成134月の改正で、生年月日に応じて支給開始年齢が65歳まで段階的に引き上げられるようになりました。下表を参考にしてください。

<表1

生年月日(男性)

生年月日(女性)

支給開始

昭和1642日〜

昭和1841

昭和2142日〜

昭和2341

61

昭和1842日〜

昭和2041

昭和2342日〜

昭和2541

62

昭和2042日〜

昭和2241日 

昭和2542日〜

昭和2741

63

昭和2242日〜

昭和2441

昭和2742日〜

昭和2941

64

 

 しかし、60歳から全くもらえないのかと言うとそうではありません。老齢厚生年金の一部分は60歳からもらえますが、全部をもらえるのが上表の支給開始年齢だということになります。

ただし、男性は昭和3642日以降生まれ、女性は昭和4142日以降生まれの人達は、完全に65歳からの支給になります。

年金は何年支払えば受給できるのか

では、年金は何年間支払い続ければもらえるのでしょうか。

原則として、3種類の公的年金のどれかに25年間加入(3種類の合算OK)していれば、受給資格があります。しかし例外として、昭和541日以前生まれの人は、生年月日に応じて24年から10年加入していれば受給資格が得られることになっています。

毎月こつこつと保険料を支払い続けた結果、一体何歳になれば受給できるのか、年金改正が頻繁に行われている昨今、非常に不安になります。現在、国民年金は65歳から支給が開始されます。厚生年金及び共済年金は60歳から支給開始ですが、生年月日に応じて65歳支給になります。また、年金がもらえる年齢になっても、在職中で、厚生年金や共済年金に加入している場合には、年金の一部が支給停止になります。これを「在職老齢年金」と呼んでいます。

 

年金はいくらもらえるか

 

一般的に、老齢になった時に受給できる「老齢年金」のことを指して「年金」と呼んでいる場合が多いのですが、その他にも

障害になって障害等級に該当した場合に受給できる「障害年金」、家族が死亡し、遺族になった場合に受給できる「遺族年金」があります。障害年金および遺族年金の詳しい説明は、次の機会に譲ることにして、ここでは「老齢年金」について見ていきます。

 

<国民年金(老齢基礎年金)>

 

昭和1642日以降生まれの人の場合、40年間加入して満額804,200(平成1511日現在)です。昭和1641日以前生まれの人は生年月日に応じて39年から25年加入していれば、満額受給できることになっています。満額受給できなくとも、原則25年間加入で受給資格はあるのですから、加入年数に応じた年金が支払われます。下記に算式を記しますので参考にしてください。

804,200×

<厚生年金(老齢厚生年金)>

 

老齢厚生年金は、定額部分と報酬比例部分、配偶者加給部分に分かれており、そのうちの報酬比例部分を指して「部分年金」と呼んでいます。

@ 定額部分の年金額 

 1,676円×1.8751.000(※1)×加入月数×1.000

 

A 報酬比例部分の年金額

 平均標準報酬月額(※2)× × 加入月数×1.031

 

B 配偶者加給部分の年金額

  加給年金は231,400です。

但し、昭和942日以降に生まれた受給者は、特別加算さ

れるため、生年月日によって次のようになります。

 

昭和1842日〜昭和2041

402,100

昭和1742日〜昭和1841

368,000

昭和1642日〜昭和1741

333,900

昭和1542日〜昭和1641

299,700

昭和 942日〜昭和1541

265,500

 

なお、共済年金は厚生年金に統合され、内容は厚生年金と大体同じですが、「職域加算部分」がありますので、厚生年金の加入者より年金額が多くなるという点で有利です。

 

      ------------次ページへつづく-------------

 

 

 

 

 

 

1支給率

生年月日

支給率

生年月日

支給率

大正15.4.2〜昭和2.4.1

1.875

昭和12.4.2〜昭和13.4.1

1.327

昭和2.4.2〜昭和3.4.1

1.817

昭和13.4.2〜昭和14.4.1

1.286

昭和3.4.2〜昭和4.4.1

1.761

昭和14.4.2〜昭和15.4.1

1.246

昭和4.4.2〜昭和5.4.1

1.707

昭和15.4.2〜昭和16.4.1

1.208

昭和5.4.2〜昭和6.4.1

1.654

昭和16.4.2〜昭和17.4.1

1.170

昭和6.4.2〜昭和7.4.1

1.603

昭和17.4.2〜昭和18.4.1

1.134

昭和7.4.2〜昭和8.4.1

1.553

昭和18.4.2〜昭和19.4.1

1.099

昭和8.4.2〜昭和9.4.1

1.505

昭和19.4.2〜昭和20.4.1

1.065

昭和9.4.2〜昭和10.4.1

1.458

昭和20.4.2〜昭和21.4.1

1.032

昭和10.4.2〜昭和11.4.1

1.413

昭和21.4.2以降

1.000

昭和11.4.2〜昭和12.4.1

1.369

 

 

 

2 平均標準報酬

 大雑把に言うと、今までの給料の平均額です。(正確には厚生年金に加入した全期間の標準報酬月額の平均額。過去の標準報酬額は、再評価率を乗じて現在額に再評価される。過去の標準報酬が1万円未満の場合は1万円になる。)

 

3乗率

生年月日

乗率

生年月日

乗率

大正15.4.2〜昭和2.4.1

10.00

昭和12.4.2〜昭和13.4.1

8.54

昭和2.4.2〜昭和3.4.1

9.86

昭和13.4.2〜昭和14.4.1

8.41

昭和3.4.2〜昭和4.4.1

9.72

昭和14.4.2〜昭和15.4.1

8.29

昭和4.4.2〜昭和5.4.1

9.58

昭和15.4.2〜昭和16.4.1

8.18

昭和5.4.2〜昭和6.4.1

9.44

昭和16.4.2〜昭和17.4.1

8.06

昭和6.4.2〜昭和7.4.1

9.31

昭和17.4.2〜昭和18.4.1

7.94

昭和7.4.2〜昭和8.4.1

9.17

昭和18.4.2〜昭和19.4.1

7.83

昭和8.4.2〜昭和9.4.1

9.04

昭和19.4.2〜昭和20.4.1

7.72

昭和9.4.2〜昭和10.4.1

8.91

昭和20.4.2〜昭和21.4.1

7.61

昭和10.4.2〜昭和11.4.1

8.79

昭和21.4.2以降

7.50

昭和11.4.2〜昭和12.4.1

8.66

 

 

 

保険料免除制度とは

ここで、少し国民年金の保険料免除制度について見てみましょう。

国民年金保険料は、収入にかかわらず、現在月額で13,300です。しかし、保険料がどうしても払えないという人のために保険料免除制度を設けています。その種類は次のとおりです。

 

@法定免除 障害年金の受給者や生活保護を受けている世帯は、 

届出れば保険料が免除になります。

A 申請免除 所得のない人・少ない人は、申請して認められれば  

保険料が免除になります。

      標準4人家族世帯で年間所得が164万円以下となっ

ています。

B半額免除 この制度は、平成144月から新たに設けられた

もので、標準4人家族世帯で年間所得が285万円以

であれば、申請して保険料の半額が免除されます。

C学生免除 アルバイト代等で年間所得が68万円以下の学生であれば、申請して保険料が免除になります。

 

 上記@ACの免除期間の年金は、通常受給できる額の3分の1

で、Bの半額免除は3分の2相当額になります。

また、いずれの場合にも、保険料を支払えるようになった時、

10年前まで遡って保険料を追納することが出来ます。勿論、追納した場合には、納付済期間として通常もらえるべき年金がもらえます。

 

企業年金とは

それでは、ここで企業年金について少し触れておきましょう。

1に示しましたが、3階部分に「厚生年金基金」「税制適格退職年金」があります。「厚生年金基金」は、すべての厚生年金加入者が加入しているものではなく、基金に加入している企業で働くサラリーマン等が加入しており、厚生年金に上乗せして支給する年金のことです。

「税制適格退職年金」は、企業が、退職金積立の全部または一部の運用から給付までを金融機関に委託する制度です。税制上の優遇措置で、掛金は非課税となっています。

 

なぜ日本に「確定拠出年金」が導入されたか

 

年金制度の危機と騒がれている現在の日本で、「確定拠出年金」が注目され、導入に至ったのは当然と言えます。この「確定拠出年金」というのは、一般に「401K」と呼ばれているもので、その根拠は、アメリカの内国歳入法第401条のK項にあります。社員の賃金を、現在現金で受け取るか、年金制度へ拠出して将来受け取るか選べるという内容の法律です。

では、なぜ日本においてこの「401K」制度が必要になったかと

いうと、それは次の理由からです。文頭でも述べましたが、日本では、猛スピードで少子高齢化が進んでいます。

現在の年金制度は「世代間扶養」と言って、若年世代が支払う保険料で、高齢世代の年金を支給しているのです。このため、保険料を支払う若年世代が減り、受給する老齢世代が増えれば、制度そのものが成立しにくくなるのは当然と言えます。

 そこで脚光を浴びてきたのが「401K」です。日本の現在の年金制度は、受給資格者の年金給付額を確定させた上で、保険料決定するという方法を採用していることから「確定給付年金」と言われています。この方法ですと、将来の年金積立の不足を国が負担しなければならないことになります。あるいは、制度そのものが破綻してしまいます。

 従って、個人個人が自己責任で掛金や運用方法を決める「確定拠出年金」が非常に有効になってきたのです。

 

 

確定拠出年金とは

 

「確定拠出年金」は、保険料(掛金)を自分で決定(確定)し、

運用した結果に見合った年金を受取るという意味で、現行の確定給付年金方式とは全く逆と言えます。自分で支払った保険料(掛金)で、将来の自分の年金を受取るのですから、年金の積立金不足だの年金制度の破綻だのと、自分の手が及ばないところの心配をする必要が全くありません。

しかし、「確定拠出年金」は自己責任で運用方法を選択した結果、年金が増えたり減ったりするのですから、「運用」が非常に重要になってくるのです。そこで、運用商品を提示したり記録管理したりする機関がその重要な役割を果たすことになります。この役割は、金融機関や投資顧問会社などが代行し「運営管理機関」と呼ばれています。

また、「確定拠出年金」には「個人型」「企業型」があります。しかし、現在の段階では、公務員や専業主婦(主夫)、60歳以上の人はどちらにも加入ができません。

「個人型確定拠出年金」は、国民年金の加入者が加入できます(第1号加入者)。保険料を滞納していたり免除を受けている場合には加入が出来ません。

また、会社勤務をしている人でも、会社が「企業型確定拠出年金」を導入していなければ、「個人型確定拠出年金」に加入することになります(第2号加入者)。

「企業型確定拠出年金」は、この制度を導入している会社の社員が加入できます。そして、厚生年金に加入している人に限ります。

「個人型」と「企業型」の大きな違いは、前者は掛金が自己負担で、後者は会社負担であるという点です。

また、「企業型」の場合に、会社の決めた掛金拠出額に自分で上乗せして掛金を増やすこと(マッチング拠出)は、現段階ではできません。

 

「確定拠出年金」の掛金はいくらまでOK

 

では、掛金はいくらまで掛けられるのでしょうか。

「個人型」第1号加入者(自営業の人など)は、月額68,000円以内です。国民年金基金に加入している人は、基金と「個人型確定拠出年金」の掛金合計が月額68,000円以内ということになります。

「個人型」第2号加入者(会社勤務の人)は、月額15,000円以内です。

 「企業型」で企業年金のある会社は、月額18,000円以内、企業年金のない会社は、月額36,000円以内となっています。

「確定拠出年金」のメリット

ここで、「確定拠出年金」のメリットを考えてみましょう。

 

 @掛金は税制優遇措置を受けられるという点です。「個人型」の場合は、全額所得控除対象になりますし、「企業型」の場合、会社は全額損金算入できます。

A受取利子・受取配当金は「個人・企業型」とも、非課税です。

@ 年金で受取る老齢給付金は、「公的年金等控除」が受けられ

ます。

A 企業年金(「厚生年金基金」や「税制適格退職年金」等)は、

会社が異なると制度も違うため、転職先の会社で継続できないことがほとんどですが、「確定拠出年金」は、加入を継続しなくなった場合、掛金を拠出することは出来ませんが、運用は続けられます。

 

以上、公的年金・企業年金・401Kについて、大変おおまかに仕組みをお話しましたが、おわかりいただけましたでしょうか。年金制度は原則より個別の例外の方が多いため、細かく見ていくとかなり種々の内容があります。今回は概要にとどめましたが、機会がありましたら、個別に詳細を見ていきたいと思います。

 

 

 

 

 

       平成141230

 社会保険労務士 長倉 恵