保証人としての責任追及を迫る融資機関に貸し手側の責任追及を問う法的根拠

 

  1. 借り手側の権利を主張する背景

 

契約は意思表示に基づく法律行為であり、借入金の返済や保証人としての債務履行は法律上の義務であり、そのことは貸し手側の権利と表裏一体の関係にあります。

この場合、貸し手側の権利の追求と借り手側の義務の履行は契約自由の原則に基づき表現されるものの法体系全体の中で、私権は、@公共の福祉追随の原則(民法一条一項)、A信偽誠実の原則(民法一条二項)、B権利の濫用禁止の原則(民法一条三項)と言う全私法の理念にもとづいて、その行使の自由と義務性から契約の履行全体を眺めなければならないのです。

けだし、近代法治国家は自救行為を禁止しており(例外正当防衛と緊急避難)国家権力的に決着付けることになっているからです。

その対価として、どんな争いにも納得の行く裁判を受ける権利を国民は等しく保障されております。(憲法三十条)。この「納得の行く裁判とは」について現代社会の背景を踏まえた上で、「どちらを保護すべきが法の正義公平の理念に叶うか」と言う価値判断が問われることになるのです。

昨今の中小企業が巻きこまれる融資トラブルに取引先の連帯保証人としての責任を追及されるケースが多発しており一方的に法的弱者として責任追及の犠牲に甘んじること無く貸し手責任の有無を検証すべき時代背景が存在すると思われるのです。

 

(二)貸し手側の責任を追及する根拠

 

連帯債務が同一の債務につき「多数債務者が独立的に負担する」との取り扱いを受けるものの、その履行の結果憲法が保証する生存権を脅かす一切の矛盾をも許すものではない。

国民は等しく裁判を受ける権利を憲法が保障しており、如何なる争いにも納得の行く裁判を受ける権利が有ります。

生活権を犠牲にした債務履行の強制は主権国民としての基本的尊厳を損なうものであり、国民の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を侵害するものと言えます。(憲法二十五条)また、この事を大前提に生活保護法第一条は憲法第二十五条遵守のための必要な保護を規定しております。

また民法は債権回収の直接強制(差押え・民法第四一四条)を規定する傍ら差押え禁止財産を規定し債務者等の最低限の生活保障を計っている。(民事執行法第一三一条・第一五二条)

従って融資機関は信義誠実の原則に則り安易な権利濫用に走ること無く高度な公共性の立場からの社会的責任を担う存在体であり、@当初貸付けの是非。A主たる債務者が支払不能と判断した根拠。B主たる債務者の現在生活状況から支払不能と判断した根拠と事実認定の是非。C主たる債務者の将来的支払能力不能についての根拠D連帯保証人への責任追及の社会的妥当性を貸し手側に説明する義務が存在する。この説明義務(インフォームドコンセント)を前提とした任務懈怠に責任追及の根拠を見出すことが出来るのである。

 

 

 

(三)倉重会計が公開質問する責任追及の事案

    以下に倉重会計が国民金融公庫S支店長宛提出した原文を掲載します。

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倉重税務会計事務所

所長税理士倉重道男

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ファックス03−3380−5106

 

拝啓 貴社益々ご繁栄にこととお慶び申し上げます。

毎々格別のお引き立てに預かり厚く御礼申し上げます。

敬具

本日は私共の顧問先であります、(株)甲の件でお話が御座います。

先日(株)甲のA社長より電話を頂き、過って連帯保証していた (有)乙通商に関し保証人としての責任を追及されているとのことで、その事実関係を聞いているうちに不況化に喘ぐ中小企業にたいする国民金融公庫の対応に社会正義の立場から疑問を持つに至りました。

  1. 主たる債務者である (有)乙通商に対する当初貸付判断の是非と従前の実績。
  2. 主たる債務者が回収を滞った経過と(有)乙通商の最近までの営業状態。
  3. 主たる債務者の支払不能と判断した経過とその是非と代表取締役の支払能力の状況。
  4. 主たる債務者と代表者が支払不能の状況を継続していることの証明。
  5. 保証人に対する法的責任追及の経過とその是非。

金融機関の公共性が具体的妥当性に照らして判断される昨今、上記の点に付き書面を以って

お答え下さい。

中小企業の担保力不足と信用力不足を補うと言う公共性に照らし高度のご判断の下に健全な

資金運用が必要な所、ともすると安易な貸付と危険回避に走るあまり保証人に対しての法律という最低条件のモラルを盾に安易な法的措置の実施の感が拭えず、私なりに法的安定性と具体的妥当性の勘案からお話し合いをさせて頂ければと存じます。

法律は最低の道徳レベルであり劣悪な法人に軽率な判断による貸付を実行しておきながら、回収が滞ってくると主たる債務者からの回収努力を安易に放棄し保証人に法的責任のみを問うことのなきよう、事実認定の経過を金融機関に対する世間の常識をもってご案内下さいますようお願い申し上げます。

法的な追求が憲法25条に保証する「健康で文化的な最低限の生活を営む会社構成員の権利」を奪う結果を招来しないようご配慮下さいますようお願い申し上げます。

まずは、第一弾として上記お願いを申し上げます。