自己株式・金庫株(Treasury Stock)の活用
平成13年改正商法は従来の自己株式禁止を排除し金庫株を全面的に解禁しました。 金庫株とは自社株を取得し保有する事を言う。 自社株は資本充実の原則(資本維持・株主平等)に反するとの見解が商法上の立法趣旨でしたが、平成13年10月1日より解禁になりました。(商法第210条) 商法は本来債権者保護の見地を主としますが、企業再編という株主本来の保護も必要です。 会社債権者の持分としての、「負債の部」と株主持分としての、「資本の部」の総合的勘案から経済的動機(証券市場の活性化)を促進する目的で原則禁止から原則容認へと商法改正が行われました。 自社株には議決権がないので、従業員株主制度・経営権安定に寄与します。 自社株には配当が無いので、社外流出がありません。 自社株の保有は悪意の第三者の対抗手段となります。 以下に取得から処分について説明します。 1. 自己株式の取得 旧商法で原則禁止されていた自社株の取得は全面改正され、会社は自己株式(自社株)を原則として自由に取得できるようになりました。(商法第210条) 但し、株主平等の原則から定時株主総会の決議を要件としております。 定時株主総会では、取得する自己株式の種類・総数・取得価額・特定買い受け株主等を決議します。(商法第210条)従って臨時株主総会では決議できません。それは配当可能利益の取得制限があるからです。 自己株式を取得する会社は株主通知が必要です。 又定款変更決議ですので、特別決議となります。(商法第343条) 株主は上記通知を受けて自己を売主とする請求が出来ます。(商法第210条6,7) 2. 制限 自社株の取得は取得価額の総額に下記の制限があります。(商法第210条3) (1) 配当可能限度額(直前配当可能利益-利益処分額) 配当可能利益=純資産 −〔資本金+法定準備金+繰延資産超過額+自己株式〕 算式から解るように自己株式は配当可能利益のマイナス要素です。 (2) 株主総会の決議により減少した資本お及び法定準備金を限度とします。但し従来のストックオプションや消却にみられた発行済株式総数の10%制限はなくなりました。また、特定者よりの買受けは特別決議です。(商法第210条5) 又、自己株式の取得により年度末に、資本の欠損が生じる場合は取得できません。(商法第210条の2-1) 取得した場合は取締役の賠償責任が生じます。(商法第210条の2) (3) 子会社による親会社株式の取得は株式の交換・移転や会社の分割・合併等に制限されます。ただし、この親会社による子会社からの自己株式取得は取締役会決議で足ります。取締役会決議によって、その種類・総数・取得価額を決議すれば上記配当可能限度額の範囲で可能です。(商法第210条の3) 3. 保有 即時消却処分が廃止され、会社は自己株式を数量・期間の制限無く保有でようになりました。 4. 処分 取得した自己株式は取締役会決議でその種類・数量・価額及び払い込み期日を決議して随時に譲渡処分が可能となりました。(商法第211条1) 自己株式の取得が「資本の払い戻し」なのに対して自己株式の処分を「増資」として捕らえ商法280条の2の新株発行の手続きと同様としている。 また、特定者に有利発行する場合は特別決議としている。(商法第211条2) 株式の消去も処分の一形態であるが、取締役会決議でいつでも行えます。(商法第212条1) (商法第212条1) またこの場合会社は株式失効の手続きが必要です。(商法第212条2)。 5. 活用 会社の役員・従業員が一定の期間に一定の株式数を一定の金額で取得する権利(ストックオプション平成14年4月4日より制限撤廃:別稿参照)に活用し従業員持ち株制によるモラルやモチベーションの向上に活用できます。 また、自社株式は会社に株を買い取ってもらう事になりますから流通性の低い同族会社の相続対策として株式の資金化対策や退職役員の持ち株を会社が取得して上記ストックオプションに活用できます。 6. 会計処理
貸借対照表(B/S)上資本の部に自己資本の部を設け控除形式で表示する。 これは一般の有価証券と同様に資産計上すると企業の財政状態の適正な判断を損ねる可能性があるからで、投資家保護・債権者の安全を考慮してます。 また、自己株式処分益は「その他の資本剰余金」として表示されます。 |