代金回収の実務(貸倒処理)
売掛金の回収は最大限2ヶ月(または業界の通常回収慣習)としてこれを超えた取引先を常時把握して管理します。 2ヶ月を超えた取引先に営業活動の一環として支払い予定の確認を行います。 代金回収業務が進行し、支払い時期が確定できるなら、その証として小切手・手形を振出してもらいます。相手方の支払い優先順位を高めます。 半年(または商慣習期間)を限度にこれ以降この取引先とは前払い・代金引換・納入拒否を実行します。 また取引先が将来の支払い約束をした場合は、担保提供・連帯保証人等を要求し債務不履行をした場合に備えます。また債務不履行時に強制執行を承諾する旨の合意書も有効です。 それでも回収できない場合は取引先の名前・住所・取引発生日とその証憑(請求書・納品書等)取引内容の経過を管理して内容証明郵便を郵送して回収不能に備えます。 相手先に常に未払いの残高があること、支払いを延期していると法的措置までを実行されるとの心理的圧力をかけることです。 支払いの悪い取引先は厳しく追及してくるところから優先して支払っているものです。 相手に支払い能力がない場合や一定の期間回収が出来ない場合は貸倒損失の計上が認められますが、形式基準・実質基準・税務署が容認する処理は下記の通りです。
上記の処理に当たって重要な点を説明します。 (1)債権放棄は相手方の債務超過を前提に書面をもって債務免除を債務者に通知したものに限られます。したがって売掛金の残高を貸倒処理する場合相手先・発生年月日・回収状況の業務経過が判明していることが前提条件です。 (2)相手先不明の売掛金残高がある場合貸倒損失計上して費用計上することは認められません。この場合不明となった期に自己否認(申告加算)することになります。 (3)従って売掛金の残高が長期間回収できていない場合は次の処理が必要となります。 1) 残高の内容を把握して、相手先の状況をつかむこと。 2) 残高の内容不明な売掛金はその期に、自己否認(別表加算)すること。 3) 相手先が確認できているものは相手先に支払いの要求を下記の内容証明と共に送付して、その所在を明確にして迅速に回収の努力を継続し、なおかつ回収不能となる原因を追究した上で貸倒処理をする。 4) 少なくとも取引当初の住所地に下記の内容証明を送り相手先不明で戻った書類を保存しておく。 5) 得意先と取引停止したときを記録して一年を経過した時点を明確にして備忘記録を残してその期の貸倒損失として費用計上を明確にする。 (4)取引先に通常の営業活動で回収できない場合は下記の資料を段階的に送り相手先からの回収を促す努力を普段から心がける。 【第一段階】 売上代金のお支払いのお願い 拝啓 貴社ますますご清勝の段お慶び申し上げます。 いつも格別のお引き立てにあずかり、厚く御礼申し上げます。 さて、売上代金の件ですが下記の金額についていまだ、ご送金いただいておりません。 当社は仕入先の決済を2ヶ月で実行しておりまた人件費等の支払いは迅速な決済を余儀なくされております。従って、当社の資金繰りの都合もございますので、添付の資料をお調べのうえ至急ご送金賜りますようお願い申し上げます。 敬具 平成○○年 月 日現在未回収額 円 添付資料 (1) 売上一覧表 (2) 売掛金元帳 (3) その他 振込み先 ○○銀行(○○○○) ○○支店(○○) ○○預金 ○○ 【第二段階】 通 知 書 当社は平成○○年○月○日、貴殿に対し、当社販売にかかる売掛金残高が○○円に達しその支払計画を第一段階でお尋ねしたにも拘らず、代金支払予定の返事を得ておりません。このままですと誠に残念な結果を将来します。 改めて今月中に誠意ある支払計画を提示してくださいますようお願い申し上げます。 右通知します。 平成○○年○○月○○日 東京都○○区○○ 通知人 ○○会社 ○○ 代表取締役 (印) 東京都○○区 被請求人 ○○会社○○ 代表取締役 ○○ 殿 【第三段階】 請 求 書 当社は平成○○年○月○日、貴殿に対し、当社販売にかかる売掛金残高が○○円に達しその支払予定を第一段階でお尋ねし、第二段で支払計画の提示をお願いしたにも拘らず、誠意ある回答を得ておりません。 今月中にご回答いただけない場合は残念ながら法的手段をとる結果を将来します。 誠意あるご回答お願いします。 右請求いたします。 平成○○年○○月○○日 東京都○○区○○ 請求人 ○○会社 ○○ 代表取締役 ○○ (印) 東京都○○区 被請求人 ○○会社○○ 代表取締役 ○○ 殿 参考資料 内容証明郵便による債権放棄通知例 債権放棄通知 当社が貴社に対して有する下記債権は、ここに放棄いたします。 下記に通知に及びます。 記 1.金三百万円 但し、当社貴社間の平成××年××月××日の売掛金残金 平成××年××月××日 通知人 住所 名称 代表取締役 被通知人住所 名称 代表取締役 以上 立証資料 (1) 更正計画等法定文書 (2) 関係者集会資料 (3) 債権者集会の協議書 (4) 契約書 (5) 債権放棄の書類(内容証明郵便) (6) マスコミ資料 (7) 返戻郵便物 (8) 調査経過資料 (9) 帳簿・証憑等 (10) 取引先の財務資料 (11) 取引発生の経過の記録と相手先との回収業務経過の記録。 代金回収の法的処置 (1) 内容証明による債権金額の確認。 (2) 支払督促制度 簡易裁判所による民事訴訟法382条に基づく債権回収手段です。 これは回収不能な金銭先権について簡易に請求する手段です。 裁判所から支払い督促(支払い督促)を出してもらう方式です。 書面による支払い督促に異議申立がなければ一ヵ月後強制執行手続き(差し押さえ)が可能です。 (3) 少額訴訟制度 審理が一回かぎりでその日に提出された証拠に基づき簡易に訴訟ができる手続きです。 これは平成10年施行された制度です。(施行当時は30万円) 60万円以下の金銭支払い請求の場合に被告または原告所在の簡易裁判所の判決を即決でもらう方法です。 被告の同意と出頭が必要となります。被告が望めば通常の裁判になります。 (4) 民事調停 裁判官のアドバイスにより解決する手段です。 (5) 通常の訴訟 弁護士を立て裁判として訴訟し争います。費用と時間を要します。 |