遺言のすすめ 

遺言は遺産を自分の意思決定(法定相続に優先します)により処分する法的手続きです。

子供のいる方は相続が争族にならないように、特定の財産を特定の相続人に相続してもらうために有効な手段です。子供のいない人はたとえば相続人が兄弟姉妹と配偶者であった場合などに遺言により遺産の全部を配偶者に相続させる遺言を残すなら、配偶者は遺産分割の手続きと言う煩わしい手続きをしないで相続登記することが可能となります。兄弟姉妹には遺留分の減殺請求権がないからです。また法定相続人以外の特定の人たとえば内縁の妻・非認知の子・息子の嫁・相続人でない兄弟姉妹等に遺産を受遺してもらうなどの場合に特に遺言が有効な手段です。

遺言は民法の規定に沿ったものでなければ無効です。(民法第960)

15歳以上の行為能力者はいつでも自由に遺言が出来ます。(民法第961)

また遺言をした者が正気な時にした遺言が有効となります。(民法第963)

遺言で他人に財産を与えることを遺贈といいます。遺贈には包括遺贈(財産の半分といった割合で与える場合を言う。)と 特定遺贈(特定の土地とか建物を指定して与える場合)とがあります。これらの遺贈は相続人の最小限の相続権である遺留分を侵害することは出来ません。(民法第963)

一般的には遺言には@自筆証書遺言A秘密証書遺言B公正証書遺言の三方式があります。

又、民法は口頭による遺言を認めていませんので書面によらなければなりません。

又、日付や署名押印のない遺言も無効です。

遺言書における「相続させる」と「遺贈する」とでは所有権の移転に関してはその効力は同様ですが、相続は全財産(プラスもマイナスも)を相続人に引き継ぐ場合に表現し、遺贈は相続人以外の人に財産を譲り渡す場合に使用されます。不動産所有権の移転登記手続に際しての登録免許税(相続2/1000・遺贈10/1000H18年41日以降は倍になります。) に違いが生じますので相続人に対しては「相続させる」と表現するのが一般的です。登記の原因により「相続させる」と「遺贈する」とを区別するからです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(一)       自筆証書遺言の書き方。

 

 

 

遺言の作成から保管まで全て自分の手で一人でできる遺言です。(民法第968)

遺言者が自分で遺言の内容全部と日付及び氏名を書いて押印すればよいのです。自筆とありますように遺言の全文を自筆で書くことが要件です。従ってテープやビデオ、ワープロといったものではできませんし、他人の代筆も無効です。又、日付は年月日までを記入することが要件です。年月だけの記入や×月吉日というのも無効です。

全部を自分で書いて日付・署名・捺印を要件とする要式行為を遺言というのです。

@日付→ 年月日までをきちんと自分の手で記入する。

A署名→  自筆(戸籍上の氏名・ペンネーム・雅号・芸名・通称でもよい)

B捺印→ ハン 実印でも認印でも拇印でも有効で自署し、押印する(住所はなくても有効です) 用具 用紙や筆記用具は、鉛筆・ボールペン・万年筆・サインペン等何の制限もありません。又、便箋・原稿用紙・ノート・日記帳簿等何でもかまいません。又収入印紙等は不要です。

遺言書はその秘密性を保つ上から封筒に入れ封印しておくのが、改ざんを防ぐ意味でも有効です。又、訂正を行う場合二本線で消して字句を訂正し、押印したうえ欄外に「この行二字削除、三字加入」等、変更の旨を付記し氏名(署名)を書きます。安全上からは書き直すのが最も良い方法だと思います。又、遺言書は遺言執行者に保管してもらうか、銀行の貸し金庫に保管するのが最も安全な方法です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《遺言書文例》

 

遺言書

  遺言者○○○○はこの遺言書により下記のとおり遺言する。

 

T長男○○○○には、次の物件を相続させる。

 

(1)   東京都中野区中野3丁目38番地所在

宅地279.3u

(2)   同番地所在

家屋番号8号

木造煉瓦二階建住居一棟

床面積 177.88u

266.55u

(3)   上記家屋内にある什器備品その他一切の動産。

 

U長女○○○○には婚姻の際現住所の住宅資金を補助してあるので、次の物件を相続させる。

 

(1)   三菱東京UFJ銀行中野駅前支店 定期預金全額。

(2)   三菱東京UFJ銀行の株式      100

 

V妻○○○○にその余の財産全部を相続させる。

 

W遺言の執行者として下記の者を定める。

 

  東京都中野区中央5丁目3813

  倉重税務会計事務所 所長税理士 倉重 道男

 

 

                                 平成17111

                                 遺言者○○○○     ㊞

 

 

 

 

 

(二)       公正証書遺言書の作成

 

公証人に自分がしたい遺言を述べこれに従って公証人が書面にし、作成するのが公正証書遺言です。(民法第969)この場合は公証人と二人以上の証人立会いのもと遺言者の口頭を筆記していくことになります。その要件は(民法第969)によれば下記の通りです。

@    証人二人以上の立会いがあること。

A    遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。

B    公証人はこれを筆記し証人に読んで聞かせること。

C    遺言者・証人はこれを承諾し署名・押印すること。

D    公証人は上記の方式に基づいて作成された事を附記して署名・押印すること。

 

 

(三)       秘密証書遺言書の作成

 

秘密証書遺言書は公証人と二人以上の証人立会いのもと遺言者の遺言書であることを申述するものです。その用件は(民法第970)によれば下記の通りです。

@    遺言者が証書を作り(代筆でも良い)自分が署名・押印すること。

A    証書を封筒にいれ証書に押した印鑑で封印をすること

B    遺言者がこの封書を公証人と証人に提出して氏名・住所を記して申述すること。

この時二人以上の証人立会いが必要となります。

C    公証人が日付等を封書に記載して遺言者・証人と共に署名・押印すること。

この秘密証書遺言書は遺言書の内容を相続人に秘密にできますが、第三者には遺言書の存在を明らかにしなければ遺言書の有無を相続人に伝えることが出来ません。発言不能者の遺言に活用できます(民法第972)

 

()遺言の効力の発生

  遺言は遺言した者が死亡した時から効力が発生します。(民法第985)

  遺言者は自由にその遺言の全部または一部を撤回にして無効にすることができます。

(民法第1022)遺言を更新した場合前後の遺言に矛盾がある場合には前の遺言は後の遺言により撤回されたものとして取り扱います。

  遺言による遺贈は遺言した者の死亡後にいつでも放棄できます。(民法第987)

遺言利害関係者は遺贈を受ける者 (受遺者)に対して承認か放棄かの催促をすることが出来ます。(民法第987)、また受遺者が意思表示をする前に死亡した場合はその相続人が遺贈の承諾または放棄をすることが出来ます。(民法第987) すなわち受遺者の相続人が受遺者の地位を承継するのです。これとは逆に遺贈を受けた者が遺贈者より前に死亡した場合の当該遺贈は無効となります。(民法第994)

 

 

 

 

()遺言書の執行

 

 自筆証書遺言は一人で秘密裏に出来る点がメリットですが公正証書遺言以外の遺言(自筆証書遺言・秘密証書遺言)における遺言書の保管者は遅滞なく家庭裁判所に提出して検認を受けることが必要となります。また封印のある遺言書は家庭裁判所で相続人立会いのもとで開封します。(民法第1004条)

遺言あるいは家庭裁判所の選任により遺言執行者を指定できます。この遺言執行者は相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します。(民法第112)遺言執行者がいれば不動産の登記を執行者の実印(印鑑証明の添付)で行う事ができます。

相続人はこの遺言執行人のいる場合は相続財産の処分・遺言執行を妨げる行為をすることが出来ません。(民法第113)これらに違反した場合遺言無効の訴えをされる恐れがあります。

この無効の訴えの心配の無いのが公正証書遺言書です。

遺言内容の確実な実行に遺言執行人が有効です。

 

 

(六)  遺言書の限界

 

 被相続人は遺言によって自分の財産を自由処分できます。

しかし、被相続人が相続人の遺留分(最低の相続分)を侵害する遺産の処分を遺言した場合相続人は減殺権を行使して当該受遺者に対して当該処分の効力を無効にする権利を主張できます。これを相続人の減殺請求権といいます。この権利は相続人としての兄弟姉妹にはありません。相続人が兄弟姉妹のみの場合被相続人の全財産について自由処分できることになります。減殺の請求は意思表示のみで有効ですが相手が応じない場合は家庭裁判所に調停の申し立てをおこないます。この減殺請求権は相続発生より一年内の権利です。

これらの遺言書は新しく作成した遺言書が優位となりますが、公正証書遺言においては遺言書の更新には公証人役場での以前の遺言書の破棄手続きを経る必要があります。

 

【T】公正証書遺言書の作成に必要な書類等

 

)遺言書作成に必要な書類について

@遺言書を作成する者の発行から3か月以内の印鑑証明書

A遺言書作成者との関係のわかる戸籍謄本

 

)公証人役場の手数料等の計算のための資料

@不動産の登記簿謄本

A固定資産評価証明書

(*もしくは固定資産税の納付書についている納税通知書に記載されている明細書)

Bその他の相続の概算金額

*公正証書遺言書の作成についての費用については総額からの計算となります

 

3)その他の必要事項

@公正証書遺言書の作成には証人が2人必要になります。

Aこの証人と言うのは双方の身内では無いことが絶対条件となります。

Bご用意が出来ない場合は、公証人役場にて確認したところ、公証人役場の方から依頼が出来るとのことです。

(費用:承認1人につき、6,000)

 

4)公正証書遺言書の作成については上記の書類と相続財産一覧表が、そろったところでに役場に連絡をして訪問日等の確認をしてください。

(訪問等が出来ない場合は公証人に来てもらうことも可能です)

 

5)作成についてはFAXやメールのやりとりでも可能とのことですので、1度役場とお話をされてから決めてください。

 

【U】分割協議書での所有権登記の必要書類

 

@被相続人の生まれてから死亡時までの戸籍謄本。

A相続人の戸籍謄本。

B遺産分割協議書

C実印と印鑑証明

D登記名義人の住民票

E除票住民票

F固定資産評価証明書

G申請書・相続関係説明図等