平成23年度税制改正(平成23年度税制改正大綱より)

平成23年度税制改正大綱は平成22年度税制改正大綱の『公平・透明・納得』を基本理念として引き継いでおります。
少子高齢化・格差拡大・経済のグローバル化、国際化・国際競争力の低下・政権運営の不安定化等不安材料一杯の中の社会保障と税制の一体化を目指しての改正です。

改正項目改正内容適用開始年月日
1.納税環境整備(1)納税者権利憲章の策定
  @納税者が受けられるサービス。
  A納税者が求める事の出来る内容。
  B納税者の求められる内容。
  C税務手続きの一覧性・簡潔・明瞭な策定。
(注記)国税通則法第1条の改正
  税務行政における納税者の権利保護
  と憲章策定の義務化と各税務手続きの
  明確化。
(2)租税教育の充実
  租税の基礎知識の普及。
(3)税務調査手続き
  @税務調査の事前通知。
  A税務調査終了時の説明責任の
    明確化。
(4)更正の請求
  嘆願の廃止、事実証明書類の添付の義
  務化 故意の虚偽更正の請求は1年以下
  の懲役、又は50万円以下の罰金
  納税者の更正の請求、修正申告・課税
  庁の増額、
減額更正期間を5年に延長し統一した。
(5)理由附記
  白色申告者の記帳義務化に伴う、概算
  控除・必要経費・専従者給与等は検討
  事項。
(6)国税不服審判所の改革
  @行政不服審査法の見直し。
  A不服申立前置の見直し。
(7)社会保障・税に係わる番号制度の早期導入の提言。
国税通則法の改正後の法律による。










平成24年4月1日以後の調査に適用。

平成23年6月1日以後の更正の請求に適用。
平成23年4月1日以後に法定の申告期限等が到来する国税に適用する。
2.個人所得税改正内容適用開始年月日
改正の基本的理念経済的な格差是正の為、所得再分配機能の回復の為、税率構造・所得控除・税額控除の見直しと金融所得課税の一体化への取り組み。平成24年分以後の所得税に適用。
@給与所得控除の上限設定。給与収入1500万円超の給与所得控除額について上限を245万円とする。平成24年分以後の所得税に適用。
A役員給与の所得控除給与所得控除の機能は、「勤務費用の概算控除」と「他の所得との負担調整」とされてきたが、4000万円超の「勤務費用の概算控除」について1/2を上限とし「他の所得との負担調整」について3/4を給与所得控除の上限とする。平成24年分以後の所得税に適用。
B特定支出控除弁護士・公認会計士・税理士等の法令の規定に基づく資格を有するものに限り、資格の取得費を特定支出の範囲に追加する。また図書費、衣服費、交際費および職業上の団体の経費(勤務必要経費という)も特定支出の範囲に追加する。ただし、給与所得控除については1/2とする。平成24年分以後の所得税に適用。
C退職所得控除勤続年数5年以内の法人役員等の退職所得については1/2課税を廃止する。平成24年分以後の所得税に適用
D成年扶養親族控除居住者が次に掲げる成年扶養親族(扶養家族のうち23歳から70歳未満)を有する場合一人につき38万円の控除
@特定成年扶養親族
※特定成年扶養親族とは成年扶養親族のうち次に掲げる者
(イ)年齢65歳以上70歳未満の者。
(ロ)障害者・要介護者・心身上就労不能者
A特定成年扶養親族以外の成年扶養親族。
(合計所得400万円(給与収入568万円)
 以下の居住者に限る)
B勤労学生控除の対象となる学校等の学生、生徒等
平成24年分以後の所得税に適用
Eその他の成年扶養親族控除居住者が特定成年扶養親族以外の成年扶養親族を有する場合の居住者の合計所得が400万円超の成年扶養親族控除額は38万円−(合計所得−400万円)×38%平成24年分以後の所得税に適用
F配偶者控除平成24年税制改正以降に抜本的改正を行う。 
G金融証券税制(イ)現行の配当・譲渡所得の10%軽減税率。
2年間延長。
(ロ)店頭金融デリバティブ取引に係わる所得
   市場金融デリバティブ取引と同様20%申告
分離とし両者の通産・損失の3年間繰越控除
を可能とする。
(ハ)総合課税の対象としている、大口株主等が支払いを受ける上場株式について発行済株式等の総数等に占める保有割合を現行の5%から3%にする。
 
3.個人住民税税率は10%比例税率を基本とする。
個人住民税は地域社会の会費である。
平成25年分以後の個人住民税に適用。
@成年扶養控除居住者が次に掲げる成年扶養親族(扶養家族のうち23歳から70歳未満)を有する場合一人につき33万円の控除
@特定成年扶養親族
※特定成年扶養親族とは成年扶養親族のうち次に掲げる者
(イ)年齢65歳以上70歳未満の者。
(ロ)障害者・要介護者・心身上就労不能者
A特定成年扶養親族以外の成年扶養親族。
(合計所得400万円(給与収入568万円)
 以下の居住者に限る)
B勤労学生控除の対象となる学校等の学生、生徒等
平成25年分以後の個人住民税に適用。
Aその他の成年扶養親族控除居住者が特定成年扶養親族以外の成年扶養親族を有する場合の居住者の合計所得が400万円超の成年扶養親族控除額は38万円−(合計所得−400万円)×38% 
B退職所得控除個人住民税の(所得割り)の額からの10%控除は廃止する。 
C給与所得控除等所得税の給与所得控除・退職所得の1/2課税の見直しは個人住民税に自動反映。 
D金融証券税制上場株式等の配当・譲渡所得等に係わる10%軽減税率(うち個人住民税3%)等は所得税と同様に対応。 
4.中小法人税

@特定同族会社の特別税率



A減価償却

B欠損金






C貸倒引当金制度
D寄付金の損金算入限度額
E会計基準の制定
(1)会計基準の導入










(2)100%グループ内法人課税について
@中小法人税に対する軽減税率を下記のように税率を下げる。
(租税特別措置法による平成26年3月31までの開始事業年度に適用)
 (イ)800万円以下18%から15%に税率を
    引き下げる。
 (ロ)800万円超 22%から19%に税率を
    引き下げる。
AH23・04・01以降の取得減価償却資産の定率法の償却率を現行の2.5倍した数値を2.0に引き下げる。
B欠損金の繰延控除制度について
中小法人(資本金1億円以下)は80%相当額を適用せず、現行の控除限度額とする。
C中小法人(資本金1億円以下)は引き続き適用法人とする。
D中小法人(資本金1億円以下)について(資本金×2.5/1000+所得×2.5/100)×1/2については、1/2を1/4に引き下げる。
(1)『会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準』の導入に伴い次の措置を講じる。(イとロについては所得税も同様)
(イ)陳腐化償却制度 (廃棄処分)を廃止
   する。
(ロ)耐用年数の短縮の特例
   国税局長の承認を受けた未経過使用
   可能期間により償却できる制度とする。
(ハ)確定申告書の添付資料に過年度事項
   の修正の内容を記載した書類を追加
   する。
(2)100%グループ内法人課税について
(イ)適格合併時の解散の株式評価損は
   計上しない。
(ロ)解散の期限切れ欠損金においてマイナ
   スの資本金等の額を期限切れ欠損金
   と同様とする。

※大法人(資本金5億円以上)に100%グループ内の中小法人の不適用とされる項目
@特定同族会社の特別税率。
A貸倒引当金の法定繰入率。
B交際費の損金不算入制度における定額
 控除制度。
C欠損金の繰戻しによる還付制度。
等。
平成23年4月1日以降開始事業年度より適用
租税特別措置法
自H23・04・01
至H26・03・31
















平成23年4月1日以後におこなわれる適格現物分配について適用
5.雇用促進税制雇用を一定以上増やした企業に対する優遇措置の創設。 
6.環境関連投資促進税制先進的低炭素・省エネ設備への投資に対して優遇措置の創設。 
7.総合特区(イ)国際戦略総合特別区域における成長産業・外食系企業等の集積促進優遇措置を講ずる。
(ロ)グローバル企業の呼び込み支援措置を創設。
 
8.租税特別措置租税特別措置について109項目の見直しと50項目の廃止・縮減の実施。 
9.消費税  
基本的理念社会保障全体について安定財源を確保する事により、制度の一層の安定・強化につなげていく。
一層の逆進性対応には複数税率よりも還付制度を検討。
 
地方消費税地方自治体もまた、安定的な公共サービスの供給財源として地方自治体の課税自主権の拡大・発揮について検討されるべきである。 
10.資産課税

@相続税
相続税の見直し
@相続税の基礎控除   ()内は改正前
定額控除→3000万円(5000万円)
比例控除→600万円(1000万円)
       (法定相続人一人当たり)
A死亡保険金の非課税限度額
現行→法定相続人×500万円
改正→法定相続人×500万円
改正後の法定相続人の数は未成年者・障害者または相続開始前に被相続人と生計を一にしていた者に限ります。
 
A税率一覧表下記参照 

相続税の税率構造(1億円までは税率の変更はありません。)

現行(税率)改正案(税率)
1,000万円以下の金額10%1,000万円以下の金額10%
3,000万万円以下の金額15%3,000万万円以下の金額15%
5,000万円以下の金額20%5,000万円以下の金額20%
1億円以下の金額30%1億円以下の金額30%
3億円以下の金額40%2億円以下の金額40%
3億円超の金額50%3億円以下の金額45%
  6億円以下の金額50%
  6億円超の金額55%

贈与税の税率構造(20歳以上の者が直系尊属からの贈与)

現行(税率)改正案(税率)
200万円以下の金額10%200万円以下の金額10%
300万万円以下の金額15%400万円以下の金額15%
400万円以下の金額20%600万円以下の金額20%
600万円以下の金額30%1,000万円以下の金額30%
1,000万円以下の金額40%1,500万円以下の金額40%
1,000万円超の金額50%3,000万円以下の金額45%
  4,500万円以下の金額50%
  4,500万円超の金額55%

贈与税の税率構造(上記以外の贈与:上記の改正後の1,000万円までは同様)

現行(税率)改正案(税率)
200万円以下の金額10%200万円以下の金額10%
300万万円以下の金額15%400万円以下の金額15%
400万円以下の金額20%600万円以下の金額20%
600万円以下の金額30%1,000万円以下の金額30%
1,000万円以下の金額40%1,500万円以下の金額45%
1,000万円超の金額50%3,000万円以下の金額50%
  3,000万円超の金額55%



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