平成21年度税制改正のポイント

平成21年3月27平成21年度改正税制が衆議院で再可決されました。

(一)住宅税制の延長と拡充

(1)住宅ローン税制

 (イ)取得の場合。

  @床面積が50u以上でその1/2以上を自己居住としていること。
  A取得後6ヶ月以内に居住し12月31日まで継続居住していること。
  Bその年分の合計所得が3,000万円以下であること。
  C借入期間が10年以上であること。
  D中古は建築が20年以内、耐火建物は25年以内の住宅であること。

 (ロ)増改築の場合。

  上記(イ)の@からCの要件は同様である。
  対象となるのは既居住の家屋についての下記の増改築を行ったこと。
  @増築
  A改築
  B大規模修繕
  C大規模模様替え
  D耐震改修工事
  Eバリアフリー改修工事
  F省エネ回収工事
  G工事費用が100万円を超え1/2以上を自己居住としていること。

(2)改正及び創設点

  @転勤等で居住の用でなくなってから再入居した場合当初居住開始から10年間の間であれば再適用が可能となった。
  A所得税から控除し切れなかった場合その額と課税総所得金額の5%のいずれか少ない方の金額を翌年分の住民税から控除できる制度が創設されました。

  註1 平成21年度から25年度までの入居に限る。
  註2 支払調書の改正により対応し市区町村への申告は不要である。


(3)長期優良住宅(200年住宅)の減税制度の創設。

  @自平成21年6月4日至平成23年12月31日までの間に
  A認定長期優良住宅を建築等して
  B新築等の日から6ヵ月以内に居住した場合に
  C当該性能強化費用が1000万円を超える場合
  D1000万円を上限とした10%を所得税額から控除する。

  註1控除しきれない場合は翌年の所得税より控除する。
  註2合計所得金額が3000万円まで
  註3長期住宅等認定書・登記事項証明書の添付が必要。
  註4認定基準とは耐久性・耐震性・省エネ性能等のために恭順的なかかりまし費用を1u当たりの標準的なかかりまし費用×住宅の床面積で計算されます。

 (ニ)控除内容

  ≪一般住宅≫

居住年控除期間借入限度額控除率
平成21年10年5000万円1.0%
平成22年10年5000万円1.0%
平成23年10年4000万円1.0%
平成24年10年3000万円1.0%
平成25年10年2000万円1.0%

  ≪認定長期有料住宅≫

居住年控除期間借入限度額控除率
平成21年10年5000万円1.2%
平成22年10年5000万円1.2%
平成23年10年5000万円1.2%
平成24年10年4000万円1.2%
平成25年10年3000万円1.2%


(4)既存住宅のリフォーム減税の創設

 (ア)省エネ改修工事

  @自平成21年4月1日至平成22年12月31日までの間に
  A一定の省エネ工事(下記のいずれかに該当する工事)を行い
   (イ)すべての居室の窓の全部を改修工事する
   (ロ)床断熱工事
   (ハ)天井の断熱工事
   (ニ)壁の断熱工事
   (ホ)太陽光発電装置(30万円を超えるもの)
  Bその期間中に自己の居住の用に供した場合に
  C当該性能強化費用が1000万円を超える場合
  D工事費用の額と省エネ工事の標準的な工事費用のいずれか低い方の金額の10%
   (200万円を限度、太陽光発電装置の場合は300万円)が所得税より控除。

  註1税額控除を受けるためには、確定申告書に控除証明書と工事該当証明書を総付
  註2省エネ工事を行い、平成20年4月1日から25年12月31日までに居住した場合借入期間を5年以上を要件として5年間のローン税額が出来る。
改修費1000万円内省エネ改修200万円の場合200×2%+800×1%(60万円)を5年間の合計で控除できる。

 (イ)バリアフリー改修工事

  @一定の居住者が自平成21年4月1日至平成22年12月31日までの間に
  A一定のバリアフリー工事(下記のいずれかに該当する工事)を行い
  Bその期間中に居住の用に供した場合
  C工事費用の額とバリアフリー改修工事の標準的な工事費用のいずれか低い方の金額の10%が所得税額控除。(200万円を限度として、所得税より控除。)
  註1一定の居住者とは
(イ)50歳以上である。
(ロ)介護保険法の要介護・要支援の認定を受けている
(ハ)障害者である。
(ニ)居住者の親族のうち(イ) (ロ)または65歳以上の者のいずれかと同居している。
  註2一定のバリアフリー工事とは介護のためのつぎのいずれかに該当する工事費用の額で30万円を超えるもの。
(イ)廊下の拡幅工事
(ロ)階段の勾配工事
(ハ)入浴・介助・出入・トイレ工事
(ニ)居住者の親族のうち(イ) (ロ)または65歳以上の者のいずれかと同居している。

  註1税額控除を受けるためには、確定申告書に控除証明書と工事該当証明書を添付する。
  註2省エネ工事を行い、平成20年4月1日から25年12月31日までに居住した場合借入期間は5年以上を要件として5年間のローン税額が出来る。
改修費1000万円内省エネ改修200万円の場合200×2%+800×1%(60万円)を5年間の合計で控除できる。他の住宅税制との選択適用となる。

 (ウ)耐震改修工事

  @一定の居住者が自平成21年4月1日至平成22年12月31日までの間に
  A一定の耐震改修工事(下記のいずれかに該当する工事)を行い
  Bその期間中に居住の用に供した場合
  C工事費用の額と耐震改修工事の標準的な工事費用のいずれか低い方の金額の10%が所得税額控除。(200万円を限度として、所得税より控除。
  註1税額控除を受けるためには、確定申告書に控除証明書と耐震工事改修証明書および住民票を添付する。

(5)不動産取得税特別措置の延長

  住宅用等の取得に係る不動産取得税の標準税率4%を3%とする特別措置は3年間延長。



(二)土地税制の創設と拡充(個人・法人)

(1)土地譲渡所得の特別控除制度の創設

  @自平成21年4月1日至平成22年12月31日までの間に取得した土地を
  Aその後所有期間5年超で売却した場合
  B譲渡所得から1000万円を控除する。


(2)土地譲渡所得の特別控除制度の創設

  @自平成21年4月1日至平成22年12月31日までの間に取得した土地を
  A取得の日を含む事業年度終了の日後10年以内に売却した場合
  B譲渡所得の8割(H22取得)は6割を課税の繰り延べとする。

  註1 棚卸資産は圧縮記帳の適用対象外。
  註2 適用届出書を取得の日を含む確定申告の提出期限までに提出する。


(3)土地登録免許税の軽減措置の延長。

  土地の売買における移転登記及び所有権の移転登記の登録免許税を22年まで延長する。


(4)事業用の買い替え特例の延長

  所有期間10年超の事業用土地建物等を譲渡し事業用土地建物等を取得した場合
  譲渡益の80%を圧縮記帳する特例が3年間H23.12.31までに延長された。


(5)土地重課停止期間の延長

  5年以内譲渡の追加課税(法人5年内10%、5年超5%)の停止は5年間延長



(三)法人税

 @軽減税率の改正

中小企業(資本金1億円以下)の軽減税率について平成21年04月01日から平成23年03月31日までの間に終了する事業年度の所得金額が800万円以下の税率を18%とする。

 A欠損金の繰り戻し制度の復活

中小企業(資本金1億円以下)の軽減税率について平成21年02月01日以後に終了する事業年度おいて発生した欠損金について繰り戻し還付制度の適用とする。

 Bエネルギー需給構造改革推進投資促進税制(省エネ投資税制)の即時償却制度の創設。

法人が平成21年04月01日から平成23年03月31日までの間にエネルギー需給構造改革推進設備として定められた一定のものを取得した場合の即時償却

 C資源需給構造変化対応設備等の特別償却・即時償却の創設。

 D特定住宅地造成事業のための土地譲渡の1500万円の特別控除。

 E外国子会社配当金の益金不算入制度の創設。

 F中小企業の交際費の損金不算入額の400万円を600万円に引き上げ。
   平成21年4月1日以降開始事業年度より。



(四)金融・証券税制

  @上場株式等の配当及び譲渡益の軽減税率のH2までの延長。
現行の、株式譲渡益は500万円、配当は年100万円を上限として10%の税率でしたがH21年度より上場株式等の配当及び譲渡益は10%(所得税10%住民税3%)となりました。
H21年分は確定申告、H22年分は源泉徴収口座内の損益通算はそのまま引き継がれました。
  A少額投資のための非課税制度の創設。
上場株式等の軽減税率から20%の本則課税(H24年から)移行される際に非課税口座開設日から10年以内の譲渡益について所得税及び住民税を非課税とする。
ただし、毎年100万円までの上場株式等への投資に係る配当・譲渡益について非課税とする。
なおここでの非課税口座は満20歳以上の居住者等について年間一人一口座とされる。
詳細の制度設定は平成22年税制改正において法制上の措置が講じられる予定である。
  B確定拠出年金制度の拡充
企業型拠出年金に導入されるマッチング拠出はその全額を所得控除とする。
また拠出限度額を引き上げ企業型は月額51,000円個人型は23,000円とする。
マッチング拠出とは事業主拠出限度額内で事業主拠出と従業員限度内での従業員拠出のマッチングを容認しその全額の所得控除を認めるものです。
  C生命保険料控除の改組
支払保険料(年間)控除額
  20,000円以下  支払保険料の全額
  20,000円超40,000円以下  支払保険料×1/2+10,000円
  40000円超80,000円以下  支払保険料×1/4+20,000円
  80,000円超  一律40,000円


(五)取引所相場のない株式等(非上場株式)に係る相続税の納税猶予(H20年税制改正)

  @経済産業大臣に認定された会社の後継者が株式等を相続した場合
  A雇用の8割保持を5年間事業を継続し相続した対象株式を保持した場合相続税の8割が納税猶予される。(ただし株式総数の3分の2まで)
5年間の事業継続期間の経過後に猶予された相続税の納税が免除される場合とは
 (イ)後継者(相続人)の死亡。
 (ロ)会社が破産または特別清算した場合。
 (ハ)次の後継者に対象株式を一括贈与した場合。
 (ニ)対象株式の時価が猶予税額を下回る中当該株式の譲渡を行った場合。
 (ホ)納税猶予制度と小規模宅地との完全併用が可能となりました。
  註1納税猶予の適用後適用要件を満たさなくなり納税猶予の全部または一部が取り消された場合、猶予税額と利子税(2.2%)の合わせた納付が必要となります。
  註2適用期間は平成20年10月01日以後の相続に遡って適用。


(六)取引所の相場のない株式等(非上場株式)に係る贈与税の納税猶予の創設。

  後継者が一括して自社株式の贈与を受けた場合後継者の贈与税が全額猶予される。
  (ただし株式総数の3分の2まで)
  適用要件は相続税の納税猶予の場合と同様である。

  註1自社株の贈与者である贈与者は役員を退任すること。
  註2自社株の受贈者である後継者は20歳以上であり、かつ役員就任後3年以上である事。
  註3(五)の相続税の納税猶予を受けた後継者が次の後継者に対象株式を一括贈与した場合や先代経営者(1代目)が後継者(2代目)に一括贈与した場合に適用できる。
  註4適用期間は平成21年04月011日以後の贈与について適用。