平成20年税制改正のあらまし。

平成20年度税制改正については、
経済社会の活性化と言う観点から、中小企業関係税制・ベンチャー支援税制等について改正がなされました。
具体的には金融・証券税制、土地・住宅税制等についての改正です。

(1)金融所得

上場会社株式等の譲渡益・配当についての改正点。
利子、配当、株式譲渡益に対する課税を20%分離課税とする。
ただし、平成21、22年の2年間の特別措置として、源泉徴収税率を10%とし、500万円以下の譲渡益及び100万円以下の配当については、引き続き10%(所得税7%、住民税3%)の税率を適用しますが上場株式等のこの軽減税率については、平成21年1月1日以後、本則税率20%(所得税15%、住民税5%)となります。特別措置として10%(所得税7%、住民税3%)となりました。

また、上場会社株式等の譲渡益・配当について申告不要とできるのは、
@平成20年度分は10%の源泉徴収で申告不要。
A平成21年・22年分については、10%の源泉徴収で申告不要は譲渡益500万円以下、配当100円以下の場合に限られます。
B平成23年1月以降20%の源泉徴収で申告不要となります。
この結果23年1月以降の上場会社株式等の譲渡益・配当についての金融所得について20%の分離課税に統一されます。

(2)住宅の省エネ改修促進税制の創設

 (ア)従来の住宅ローン減税

  @控除期間10年
  A適用期間6年間1%控除、7〜10年0.5%控除
  B借入限度額、A000万円
  C最大10年間で160万円の控除額。
  D平成19年度税制改正で所得税で控除しきれない控除額を住民税から控除できるようになった。これは従来(@〜C)の控除との選択であるが、15年間の控除を選択することもできます。この場合は当初10年間は0.6%11年〜15年は0.4%控除となります。最大控除額は160万円です。

 (イ)創設された住宅ローン減税

個人が住宅の省エネ改修工事を含む増改築工事(30万円以上)を行い、平成20年4月1日から同年12月31日までの間に居住の用に供したときは、その借り入れた住宅ローンの年末残高(1,000万円を限度)の1%、うち200万円までの特定の省エネ改修工事については2%を5年間にわたり所得税額から控除できる制度が創設されました。
現行の住宅ローン減税(ア)との選択制です。

@ 居住の適用期限
平成20年4月1日から同年12月31日に居住の用に供している場合にその居住の用に供した年以降5年間、当該借入金を有するときは、その者の選択により「住宅借入金等特別向上」に代えて「特定増改築等住宅借入金等特別控除」を所得税から控除できます。
A 適用控除率
特定の省エネ改修工事(H11年基準以上のもの)の住宅ローンは、200万を限度に年末残高の2.0%を控除、それ以外の増改築工事の住宅ローンは、年末残高の1.0%を控除を出来る。
B 適用対象住宅ローン
償還期間が5年以上(5年間で60万円が限度)
C 適用対象工事
 ・ 省エネ改修工事の費用が30万円超のもの。
 ・ 室の全ての窓の改修工事
 ・ 室の全ての窓の改修工事、それに併せて行う床の断熱工事
 ・ 天井の断熱工事、壁の断熱工事で、改修部位の省エネ性能がいずれも平成11年基準以上となり、
 ・ かつ、改修後の住宅全体の省エネ性能が現状から一段階以上がることとなるもの。
D 適用除外
合計所得金額が3000万円を超える年分は適用除外です。

(3)医療費控除の改正。

医療費控除の対象に特定健康診査の結果が高血圧症等と同等の状態である者に対して行われる特定保健指導(H20年4月よりのメタボ検診)に係る対価がくわえられました。
(規40の3)

(4)寄付金控除の改正。

特定公益法人の範囲に公益社団法人及び公益財団法人が追加されました。
また民法34条法人のうち特例民法法人に該当するものについては寄付金控除の対象となる経過措置が講じられました。

(5)リース取引についての改正。

 平成20年04月01日以降のリース契約については原則売買とみなします。したがってリース物件は資産計上され定額減価償却の対象となります、またリース代は未払い金の清算処理となります。また消費税法上も仕入税額控除の対象となります。従来のリース代金の費用処理も認められます。しかし、法定の耐用年数と著しく乖離したリース期間の契約はリース取引とみなされず購入とみて資産計上となり消費税の仕入れ税額控除も未払いを含めて一括控除となります。

(6)電子申告に係る改正。(平成19年度税制改正)

所得税の申告を電子申告した場合、20年分についても5,000円の税額工場が受けられます。
添付省略資料
・ 源泉徴収票
・ 社会保険控除証明書
・ 小規模共済掛け金証明証
・ 生命保険証明証
・ 地震保険証明証
・ 医療費控除証明書
・ 雑損控除証明書
・ 借入金年末残高証明書
・ 寄付金控除証明書
・ 特定口座年間取引報告書
・ 改修特別工事に係る借入金残高証明書。

譲渡所得課税の要約

(A)総合課税

対象
土地・建物・株式等以外の資産を売却した場合の譲渡所得。
ゴルフ会員権・書画・骨董品・自動車・事業用の車両,備品等の売却が対象。

長期譲渡所得(売却日において所有期間5年超)
 =(譲渡収入−取得費−譲渡経費−50万円)×1/2
(注1)50万円の特別控除は短期・長期の合計限度額です。
(注2)所有期間が5年以内の場合は短期譲渡

(B)申告分離課税

 (イ)対象T土地・建物等を売却した場合の譲渡所得。

@分離長期譲渡所得 (その年の1月1日において所有期間5年超)
 (措置法31A)
=(譲渡収入−取得費−譲渡経費−損益通算及び繰越控除または特別控除額)
税額
   所得税  15% (優良住宅地への譲渡は10%)
   地方税  5%
A離短期譲渡所得(その年の1月1日において所有期間5年以下)
 (措置法32@)
=(譲渡収入−取得費−譲渡経費−損益通算及び繰越控除または特別控除額)
税額
   所得税  30% (国,地方公共団体への譲渡は15%)
   地方税  9%
【改正点】平成16年分以降の所得から土地・建物の譲渡所得から生じた損失をそれ以外の他の所(不動産所得や給与所得など)との損益通算および次期繰越が認められないこととなりました。
B居住用の家屋、土地等の譲渡益課税
居住用の3000万円特別控除は所有期間に関わらず適用されます。
《その年の1月1日において10年を超える土地建物等の譲渡。》については軽減税率の適用があります。
   譲渡価額−取得費−譲渡費用−3、000万円=課税長期譲渡所得
 長期→譲渡の年の1月1日現在で所有期間が10年を超える場合。(措置法35)
課税長期譲渡所得所得税住民税
譲渡所得 − 特別控除額
(3000万円)
6000万円以下の部分
10%

4%
6000万円以下の部分
15%

5%

 (ロ)対象U株式等の譲渡所得:上場株式の譲渡

  株式等の譲渡所得の金額=譲渡価額 − 必要経費(取得日+委託手数料等)
分類適用年度ぜい率
所得税住民税
上場株式の譲渡H15〜H20年分7%3%
H21〜H22年分
500万円以下
500万円超

7%
15%

3%
5%
H23以降15%5%
それ以外の譲渡H15年分20%6%
H16年分以降15%5%

※公社債の売却は原則非課税・利子の受け取りは20%源泉分離風・償還金の受け取りは18%の源泉分離課税・ゼロクーポン(国外発行)は譲渡所得。
※公社債とは公債(国債・地方債)や社債をいい、国債は国がハックする債権・地方債は地方公共団体(都道府県市町村・区)が発行する債券。公社債には他に政府保証債・住宅債券・社債(事業会社発行の債券)